秋色のストックホルム

  昨年12月31日、23時50分に、マンションの前でタクシーから降りた。

 スペインのコスタ・デル・ソルから戻ったところであった。

 マンションの部屋にエレベーターで昇り、スーツケースを玄関に放置し、冷蔵後に冷やして置いたシャンパンとグラスを持ち出し湖畔に走り出た。

 年越えカウントダウンにはかろうじて間に合った。

 湖畔にぞくぞくと集まって来た老若男女は来たる2020年に新たなる期待を抱いてシャンパンの盃を掲げていた。


 それから三か月後、疫病が怒涛の如く押し寄せて世界中を震撼させることになろうであろうことを、シャンパンを愉しみながら対岸の花火を鑑賞していたこの時に、予測していた人は一部の人達だけであったであろう。


ユールゴーデン島から臨むバルト海と対岸


 しかし、秋はふたたび到来した。

 さいわいな事に、未だに世界は存続している。


ユールゴーデン島


 今年の四月には、二十年ぶりにブリュッセルに旅行をする予定であった。

 しかし私のフライトはキャンセルされ、航空券は一枚のバウチャに代替された。


 その航空券バウチャの使用期限が迫っていた。

 さて、どうしたものか。

 バウチャの使用範囲は海外旅行に限定されているようである。海外旅行は以前よりは自由になって来ていると、巷では時おり耳にする。


 しかし、

 まわりの人間は慰留にかかる。

 

 「他のヨーロッパ諸国では、感染者数が上がって来ている国もあるようだよ」

 「今、たとえばスペインに出掛けても、君のかつて知っていたようなスペインはないよ」


 私の知っているスペインは、現段階では、ない。

 私の旅行への関心はその一言で萎えた。

 航空券バウチャは捨てるしかないのであろうか。


ユールゴーデン島から臨むバルト海


 十年ぶりに自転車を修理した友人がサイクリングに行きたいと言った。

 一昨日のことだ。

 秋晴れであった。

 

 「ユールゴーデンに行こう!」、と友人は提案する。


 ユールゴーデン、中心街からはバスで行っても距離がある島である。遊園地、野外博物館、他多くの博物館等が集約されている島である。

 緑と自然が保全されており、住居等は少ない。


ユールゴーデン島の紅葉
 

 「旧市街とかじゃダメなの?」

 「旧市街の中ではサイクリングは出来ないだろう。どこかに自転車を停めて結局歩くことになる。僕は十年ぶりにサイクリングがしたいんだよ」


 私は結局折れて友人の意向に沿うことにした。

 日常、デスクワークに追われ、滅多にトレーニング如しをしていない人間に往復20キロの強行サイクリングだ。自転車から降りた後は脚がガクガクと震えていた。

 

 しかし非常に楽しかった。

 久々の充実感を味わえた。

 秋色に染まったユールゴーデンは非常に美しかった。

 撮影時間を合計三分しかもらえなかったことは、非常に残念であったが。


 ユールゴーデンには二月に美術館を訪れて以来、足を運んでいない。

 さらに、今回到達したユールゴーデン島の最東端に関しては四年間も訪れていない。

 

 ふだん訪れない土地を訪れることはやはり素晴らしい。


ユールゴーデン島から臨むバルト海と対岸


    このように少しづつ出掛ける距離を延ばして遠出をするようにしていけば、そのうち、公共バスや列車に乗ることもにも違和感を感じなくなるのであろう。


 ふたたび飛行機に乗っていずこかのヨーロッパの国を訪れることもそれほど遠い将来ではないかもしれない。


 さて、一昨日のミニサイクリングには往復二時間を要した。どうせ二時間掛けてどこかに旅行に行くなら、次回はアムステルダムにでも飛びたいものである。


 航空券バウチャの使用期限を数か月延期してもらえるものか打診してみよう。




 ご訪問頂きありがとうございました。




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