スウェーデン 幼児の手を引き大学の門くぐる 

 ある年、日本に一時帰国した時のことで、未だに自分の中では咀嚼できていない出来事がある。
 出来事というほどの大事ではない、客観的にみればほんの些細な事である。


 幼児を連れて隣町のショッピングセンタ周辺を歩いていた時のことである。


王立工科大学正面



 簡単な消費者アンケートのために呼び止められた。
 一時帰国しているときはたいてい休暇中なので、それほど急いではいない。
 私は、アンケート用紙に回答し始めた。内容は失念した。
 
 「職業」という項目があったので迷わず「大学生」と記入した。当時は大学にフルタイムで在学をしていたため紛れもなく大学生という身分であった。
 
 アンケートの担当者はペンを持って各項目を確認していたが、そのペンは「職業」の項目で止まった。
 担当の女性は顔をあげると、私の顔と幼児の顔に交互に視線を飛ばしたあと、考え込んだ。

 「この子はお客さんのお子さんですか?」 
 「そうですが、何か問題でも?」
 「それでは、主婦ということですよね?ちょっと責任者に確認をとって来ます」
 
 責任者に?
 何を確認するのか。





 確認を取って戻って来た担当の女性は、「大学生」と記入した私の回答を二重線で消し、「その他」と訂正した。
 正確に言えば、事実を歪曲して下さった。
 
 何とも後味が悪い街頭アンケートであった。


 北欧を含む海外では、子供が出来ても大学で就学することは珍しい事ではない。
 以前の勤務先(従業員300人)のトップの女性は、王立技術大学に在学中、結婚、出産、離婚を全て成し遂げた。
 それでも、エリートコースを進んできたというわけである。
 

 実際、日本の大学で勉強したわけではないので最近の内情には明るくない。
 しかし、日本のドラマ(夢のカリフォルニア)の一シーンが記憶に残っている。

 ヒロインの一人、25歳ぐらい(?)の女性が大学に入り直そうとしていた時、(多少他の人よりも年上であったため)、大学の事務所の人と間違えられ、複雑な思いをするというシーンであった。

 2002年に放映されたドラマだそうなので現在の状況は、多少異なっているかもしれない。





 主婦、および一度社会に出た人間への大学復帰に関しては、スウェーデンのほうが敷居は低い。

 
 たとえば幼児がいる場合の親は、たいていの場合は、常に時間に追われている。ほんの数分間でも自分の自由になる時間がある場合、数秒も惜しんで勉強する。
 
 可愛い盛りの幼児を保育園、および知人に預けて産み出した貴重な時間である。どうしても都合が着かない時は幼児を大学に連れて行って講義を受けたこともある。


 さらに、一度社会に出た人が大学に戻って来た場合、その方がたから、多くのことを学べる。
 実社会においては、大学で学ぶ何の知識が役に立ち、あるいはその逆であるかなども教授していただけることがある。

 数年間プログラミングにおいて従事していた人が、プログラミングが苦手な(私を含む)女子を集めて補習コースを提供してしてくれたことがある。
 それほど(おそらく講師よりも)、プログラミングに長けているのに何故わざわざ大学の学部に入り直したのか、と質問した。

 「大学の卒業証書を所持していた方がクライエントに信頼され易い」、との返答であった。

 



 他の欧州諸国における状況には明るくないが、スウェーデンに関しては大学および専門学校への門は、努力さえすれば、広く開かれている、と言える。


 学費がまだ無償のうちに、ふたたび何かのコースを履修したくなって来た。

 果たして何のコースが良いであろうか。
 コースカタログを見ると選択肢が多すぎて迷う。

 
 子供が居ても、一旦社会に出てもふたたび大学の門をくぐれる。

 そのような風潮は、いつか日本の大学にも訪れるのであろうか。



ご訪問有難うございました。

今回は、日本の一出版社から質問を受けた観点に関して、随筆のかたちにて一部紹介させて頂きました。

読みやすくするために「大学」と一括させて頂きましたが、この中には専門学校等も含めております。

前回はサムネイルに画像が出なかったので何らかの不具合が出ているのかもしれません。

最近は曇りの日が多いため、多少でも明るくするため、写真を加工させていただいております。



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